寺本動物病院Staff Blog

豚コレラ防疫作業への参加

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 皆さんも各報道によりご存知のことと思いますが、昨年から県内で散発している豚コレラは依然終息する様子はなく、県外にも拡がりつつあります。先月、豚コレラの感染が確認された恵那市の農場で防疫作業に参加し、普段従事している小動物臨床の仕事とは異なる貴重な経験をしましたのでお伝えしたいと思います。

 防疫作業とは簡単にご説明すると、農場で飼養されている豚全頭の殺処分、埋却及び農場内の消毒を行うことです。当該農場は既に豚コレラの感染が確認されていた愛知県豊田市の農場から豚を仕入れており、導入豚に感染の疑いがありました。2月6日早朝に出る導入豚の検査結果が陽性であればその日の午前中から殺処分を開始するという迅速な流れでした。私は2月6日午前5時過ぎに検査結果の連絡を受けて恵那市に向かい、午前中から夕方まで防疫作業に参加しました。

 私と同じ時間帯に殺処分に携わっていた作業員は200名前後であったと思いますが、作業員の大半を占めていたのは豚舎内での豚の追い込みや死亡豚の運び出しを行われていた岐阜県職員を主とした地方公務員や自衛隊員の方々であり、獣医師は10名程でした。作業を行った豚舎は育成豚と呼ばれる繁殖に用いられる雌豚が集められており、それらの豚は特に目立った症状を示しておらず、外見上は健常に見えました。私は電気ショックを加えられた豚に薬剤を注射する担当となり、2度の休憩時間以外は追い込みに抵抗する豚の鳴き声を聞きながらひたすら薬剤を注射し、約250頭の殺処分を行いました。死亡豚は数頭ずつフレコンバッグに詰められ、農場敷地内に埋却されていました。そして、私が作業を終えた後も、防疫作業は24時間体制で継続され、結果的に翌日の午後11時30分までに全4300頭の殺処分が終了しました。


 殺処分された豚の中には豚コレラに感染していない多くの豚が含まれていたことが推測されますが、ウイルスの拡散防止のためにはその農場で飼養されている全頭の殺処分は避けられません。感染の拡大防止は他の養豚農家を守り、結果的に食料供給の維持に繋がるためです。それを理解した上でも、分娩直後やまだ離乳していないような幼い豚も殺処分の対象となっていたことには特に心が痛みました。

 豚コレラの感染に巻き込まれた豚もそうでない豚も産業動物はペットや野生動物とは異なり本来の寿命を全うすることはできません。豚は本来10〜15年間は生きることができる動物ですが、肉豚はわずか6ヶ月齢で屠殺され肉にされてしまいます。普段、スーパーマーケットなどでは肉は既にカットされてパック詰めにされている状態でしか目にしないため、私はその肉が動物の身体の一部であることを忘れがちになります。しかし、今回止むを得ず動物の命を奪う作業を行ったことが、命の犠牲の元に食生活が成り立っていることを再認識するきっかけになりました。

 最後に、今回の防疫作業の最前線である悪臭が漂い足場の悪い豚舎内で懸命に作業をして頂いた大勢の方々に感謝したいと思います。

獣医師 舩木
  1. 2019/03/16(土) 00:00:06|
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豚コレラ/アフリカ豚コレラ研修会

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岐阜県獣医師会主催の豚コレラについての学術研修会に参加してきました。
今年9月に岐阜県で,日本では26年ぶりの豚コレラが発生したことは,報道で御存知の方も多くいらっしゃることと思います。

豚コレラは,豚コレラウィルスによって起こります。ブタやイノシシにおいて発熱や下痢などを引き起こす,強い伝染力と高い致死率が特徴の伝染病です。発生した場合の経済被害が甚大であることから,家畜伝染病予防法において,高病原性トリインフルエンザや宮崎県で大きな問題となった口蹄疫などとならび,監視伝染病(家畜伝染病)に指定されています。

研修会では豚コレラおよび類似の監視伝染病であるアフリカ豚コレラについての学術情報を勉強してきました。
一通りの講演が終わった後に,質疑応答の時間があったのですが,非常に活発なやり取りがありました。
大ベテランの獣医師も多数参加していらっしゃって,40年前に豚コレラに実際に遭遇し,最前線で対応にあたった方の話などは非常に興味深いものでした。

また,本研修会は一般公開もされておりましたので,参加者のなかには現役の猟師さんもいらっしゃいました。
イノシシ狩りを長年行ってきたという猟師さんからは,イノシシの行動範囲は,一般的な認識である4〜5 km圏内ではなく,もっと広いものである印象を持っているとか,イノシシは木曽川を渡って簡単に愛知県側に移動することができるほどの泳力をもっているなど,豚コレラの発生が岐阜県にとどまらず,近隣県においても非常に切迫した問題であることを認識させる話を聞くことができ,大変勉強になりました。

最後に,豚コレラはヒトに感染しませんが,誤った情報がインターネットなどで出回っており,風評被害がでているようです。主催者からは正しい知識を持つように呼びかけがありました。

獣医師 寺本
  1. 2018/12/05(水) 01:02:57|
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動物の救急医療



 前回のブログでご紹介しました獣医学会で救急医療に関する講演が興味深かったためお話ししようと思います。
 呼吸器や循環器は直接生命の維持に関わるため、それらの臓器に重篤な疾患をもつ患者さんは一刻も早い処置を必要とする状態で来院されることがあります。一部の心臓疾患が悪化すると発症する肺水腫もこれに含まれ、重篤な呼吸困難が起こる可能性があります。
 肺水腫とは循環不全により血液由来の液体成分が、本来空気で満たされるべき肺の空間内に漏出し、正常なガス交換ができなくなっている状態です。肺水腫を発症している患者さんは呼吸が早く、苦しくて伏せることができないこともあります。
 講演で学んだ肺の超音波検査による肺水腫の診断は呼吸状態が悪化している患者さんに酸素を吸入させながら、かつ苦しがらない体位で検査を行うことができます。肺水腫の診断法としてはレントゲン検査がスタンダードであり、今後も避けられない検査方法なのですが、酸欠状態を少しでも安定化させることが最優先される状況下では容易に撮影できないケースがあります。
 講師の先生には、その他に心臓や腹腔内臓器の救急的な超音波検査に関してもお教えいただき、今後実用的な技術になりそうです。

獣医師 舩木

  1. 2018/11/22(木) 01:19:10|
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人獣共通感染症

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「人獣共通感染症」をご存知でしょうか?
名前の通り、人と動物の間でうつる病気のことをいいます。
感染源は、細菌や真菌、寄生虫など様々です。
例えば、動物についていたダニを介して感染したり,猫ちゃんに引っかかれたり噛まれたりして感染したりすることがあるようです。

先日、私はおそらく動物が持っていたと思われる真菌(カビ)を触り、その後見事に感染してしまいました(笑)
強いかゆみが出て、写真のように赤く丸く腫れてしまいました。

過剰に神経質になる必要はなさそうなのですが,このようなことにならないためにも、日頃から動物を触った後は
手を洗う、症状が出たらすぐ病院に行くように心がけたいものです。

動物看護師 足立
  1. 2018/06/08(金) 16:25:58|
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運動器超音波セミナー



先日、名古屋市獣医師会館で行われた運動器の超音波検査セミナーに参加させて頂きました。講師は東京大学附属動物医療センターで整形外科と神経外科を担当されている本阿彌 宗紀先生です。

 獣医医療の分野において、腹腔内臓器や心臓を対象とした超音波検査は比較的普及していますが、運動器の超音波検査はまだ新しく、10年前には耳にしませんでした。超音波検査は全身麻酔が不要であり、一定水準以上の性能をもつ超音波診断装置があれば検査ができますので今後普及していく診断方法ではないかといわれています。

 セミナーでは、はじめに講師の先生の実演を見学させて頂き、その後各2〜3人のグループに分かれ、実習形式で用意された犬の膝関節と肩関節を超音波診断装置で観察します。比較的高齢の犬でみられる前十字靭帯断裂とそれに伴う半月板損傷や上腕二頭筋腱滑膜炎の診断方法を中心に学ぶことができました。

  間近で講師の先生が描出する様子を見ることができることや、直接質問できることが実習形式セミナーの良さであると実感しました。また、同じグループで受講されていた先輩獣医師の先生方と昼食をご一緒し、参考や刺激になるようなお話を色々聞くことができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。今後、繰り返し超音波検査を行う中で検査精度を高めていきたいです。

 獣医師  舩木 大志
  1. 2018/04/13(金) 07:45:50|
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